おせっかいな人の苦悩

ビジネスの現場において、「私の仕事」と「あなたの仕事」の隙間に「誰の仕事でもない仕事」が発生する。
これは「誰の仕事でもない」わけであるから、もちろん私がそれをニグレクトしても、誰からも責任を問われることはない。
しかし、現にそこに「誰かがやらないと片付かない仕事」が発生した。
誰もそれを片付けなければ、それは片付かない。
そのまましだいに増殖し、周囲を浸食し、やがてシステム全体を脅かすような災厄の芽となる。
災厄は「芽のうちに摘んでおく」方が巨大化してから対処するよりずっと手間がかからない。
共同体における相互支援というのは要するに「おせっかい」ということである。
最初に「災厄の芽」をみつけてしまった人間がそれを片付ける。

http://blog.tatsuru.com/2008/12/20_1033.php

僕もおせっかいな人なんですが、こういう話には良くぶつかります。そして苦悩します。
なんか、気づいたら愚痴っぽくなってたw
内田さんの話の補強程度に見ていただければと思います。

*最近まで論文を書き上げていたせいか、である調になってしまいました。直すの面倒なので、これで。

誰の仕事でもない隙間業務が発生するのは、硬直化した組織だ。若い組織は、まだ業務範囲がはっきり決まってないので、自分の仕事とあなたの仕事に隙間に生まれやすいことをお互いに知っている。そのため、隙間の仕事をお互いに負担しあい分散することができる。しかし、硬直化した、つまり業務の範囲がはっきりしている組織は、状況の変化によって生まれた新しい隙間に気づかないままでいることがありうる。

硬直化した組織において隙間業務に気づくのは新参者に限られる。古参はこういうことに気づけない。例えばゴミであれば、「ゴミが溜まっているのはそういうものだから」「溜まっていても大して問題はない」「誰かがやってくれる」という考え方が古参にあるからだろう。そうでなければその古参が対処しているので既に問題ではなくなっているはずである。後々問題になると分かってて何もしてないのであれば、それは組織が腐ってる。

気づくのが新参者で、問題と考えているのも新参者だから、動けるのも新参である。彼らはこの時点で、対処するか、見て見ぬふりをするかを迫られる。古参に直談判するという選択肢は、ないと思う。だって業務も知らないのに、何そんなことに拘っているんだと言われるのがオチだから。「ゴミなんてほっといて他にやることがあるだろう」と。でも、それは確かに正しい。少なくとも間違っていると断定する材料がない。だって、まだ働いてないんだから、その組織にとってゴミを定期的に捨てることが有益かと言われると新参者に分かるはずがない。もしかしたら、組織が潰れてしまうほどの懸案事項を抱えているかもしれない。それを対処しないことには、ゴミを捨てるどころか、オフィスが処分される。

内田さんのいう「おせっかいな人」であれば、自分がやれば丸くおさまると考えてゴミを捨てる。そうでなければ、見てみぬふりをする。「おせっかいな人」でない新参者は、この時点でそういうものだと考えている古参の仲間入りをする。こうして、ゴミについては、おせっかいな新参者VS古参&おせっかいでない新参者という構図ができあがり、「おせっかいな人」は孤立していく。

問題はここから。さて、「おせっかいな人」は今後どう振る舞うべきだろうか。

一つ目として考えられるのは、その人がゴミを捨てつづけることだ。しかし、これでは彼自身の鬱憤は溜まっていく一方である。評価されず、しかしゴミが溜まるのを見過ごすこともできない。そして、誰もやらないことに苛立ちを覚える。また、彼がオフィスを離れたりすれば再びゴミは溜まり始め、問題はなにも解決されない。おせっかいなやつが居たという印象だけが残る。

二つ目としては、その人がゴミを捨てるのを途中で止めてしまうことである。確かに彼に責任はなくなるが。これでは元の木阿弥である。

三つ目としては、結局のところ、自分がゴミを捨てるのをやめたら、捨てる人が居なくなってしまうことが問題であるから、ゴミを捨てる仕事を作ればいい。それに気になるからやるしかないより、仕事だからやろうのほうがよっぽど精神衛生上良い。でも、これは今の組織の業務に新しく付け加えるということで、上の者にゴミを捨てる仕事の重要性を解き、説得する必要がある。まあ要するに明文化である。例えば、ゴミのせいで通常業務に支障を与えるほどの問題が起こっているのでゴミ捨てを仕事としたいとかなんとかロジックをふるって、上司を説得する必要があり、言い換えると、政治をしなければならないということになる。でも、彼は先ほど述べた通り、ゴミ問題に関して孤立している。この状態から説き伏せるのは容易でない

どれにしたって難儀な道である。

第3の方法が組織としては一番良いが、その組織のブレインになりたいのでなければ、正直やりたくないところ。なりたいのであれば、喜んで猛進するべき方法だと思う。